通信No.1 海の言葉①

2012年06月23日

【Krill】

“Krill”という英単語は、1980年代にナンキョクオキアミ資源研究が世界的規模で行われたときに、わが国でも急速に広まった。辞書には、北欧の仔魚(young fry of fish)」を意味する語に由来すると解説されている。
日本語の「イサザ」(イサダ、エサダなどという地方もある)の語源も同様に“細小魚(いささうお)”だといわれている。どちらの言葉も、元来は水中の小魚を一般的にさす言葉だったのが、だんだん意味は拡大して、オキアミやアミのように魚類ではないものも含意するようになったのだろう。
今日では、日本語の「イサザ」はあいかわらず魚類も含めて使われるが、“Krill”の方は、ヒゲクジラ類の餌料となるオキアミ類に限って使われるようになったようだ。
C.ダーウィンのビーグル号航海記の冒頭、3月18日の記事に、海水を鮮紅色に染めているエビに似た動物を、“The sealers call them whale-food”という紹介文が出てくるが、ここに書かれているwhale-foodという言葉はダーウィンの訳であって、アザラシ漁夫たちは、本当は、krillと言っていたのではないだろうか。

《2018年7月12日に増補版を 通信No.30 に掲載しました。》

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